多くのファンや関係者を驚かせたのが、2022年春に公表されたステージ4の肺がん闘病でした。発見当時、がんはすでに肺のみならず脳や骨、副腎への転移が確認されており、医師からも極めて厳しい状況であることが伝えられていました。しかし、小倉一郎は決して希望を捨てることなく、主治医と二人三脚で過酷な治療に立ち向かいました。
功を奏したのは、近年のめざましいがんゲノム医療の進歩でした。遺伝子変異に合致した分子標的薬の投与と精密な放射線治療を組み合わせた結果、脳や全身の転移巣が劇的に縮小。一時は歩行困難に陥るほど体力を消耗しながらも、懸命なリハビリテーションを経て現場復帰を果たすという、医療関係者も舌を巻く回復を見せました。
2026年現在、小倉一郎は通院による経過観察と維持療法を続けながら、体調の波をコントロールしつつ精力的に活動を続けています。長時間の連続撮影など過度な負荷がかかる仕事はセーブしているものの、朗読劇や舞台、トークショー、さらには執筆活動など、自身のペースでこなせる文化的なフィールドで確かな輝きを放っています。年齢を重ねてなお失われない透明感と、大病を潜り抜けた者にしか出せない深みのある語り口は、同世代のみならず若い世代の観客の心をも強く揺さぶっています。