『進撃の巨人』のフィナーレにおいて最大の焦点となったのは、エレン・イェーガーが自らの命を差し出してまで強行した「地鳴らし」の真意と、その死に至る因果律です。単行本第34巻に収録された第139話「あの丘の木に向かって」において、エレンの行動原理は決して一枚岩の英雄的自己犠牲ではなかった事実が明かされました。
作中で示されたエレン死亡理由の核心は、大きく分けて3つの動機が相互に絡み合っています。第1に「始祖ユミルを2000年に及ぶ未練の呪縛から解放すること」、第2に「パラディ島の仲間たちを虐殺者を討ち取った英雄として世界に差し出し、彼らが天寿を全うできる猶予を作ること」、そして第3に「進撃の巨人と始祖の巨人の力によって過去・現在・未来の記憶が混濁する中、自らが夢想した“何もない真っ新な世界”を現実に見たかったという破滅的欲望」です。
とりわけ読者に衝撃を与えたのは、始祖ユミルが求めていた存在がエレンではなくミカサ・アッカーマンだったという真実でした。初代フリッツ王に虐待され、家族を奪われ、舌を抜かれながらも、王への異常な執着と愛情という名の隷属から逃れられなかった始祖ユミル。彼女は「心から愛する対象(エレン)を自らの手で討ち果たす」というミカサの苦渋の決断を目の当たりにして初めて愛の呪縛を断ち切り、この世から巨人の力を完全に消滅させることが叶いました。エレンは自らが悪逆非道な殺戮者となり、最愛のミカサに首を討たれる未来を知りながら、その運命のレールを逸脱することなく歩み続けたのです。