スクランパーを語る上で避けて通れないのが、長期維持の難しさと身体への悪影響です。専門スタジオや歯科医の臨床現場では、以下のようなトラブルが頻繁に報告されています。
第一に、スクランパーの排除(身体が異物を外へ押し出そうとする現象)です。上唇小帯は数ミリ程度の厚みしかない薄い筋であり、日常的な食事や会話による摩擦、ジュエリーの自重によって、ホールが外側へ徐々に移動します。最終的に粘膜が限界まで薄くなり、ある日突然ちぎれるように抜け落ちてしまうケースは珍しくありません。
第二に、スクランパーの歯茎への影響です。金属のボールやリングが前歯の歯肉(歯茎)やエナメル質と常時接触することで、歯茎がすり減って後退する「歯肉退縮」や、エナメル質の摩耗による知覚過敏を引き起こします。歯肉退縮は一度進行すると自然治癒しないため、違和感や痛みが生じた段階で直ちにジュエリーを外す判断が求められます。
万が一、引っかかりや摩擦でスクランパーが裂けた場合は、無理に再ピアッシングを試みてはいけません。口腔内を清潔に保つ口内ピアス ケアとして、刺激の少ないノンアルコール洗口液や生理食塩水でのうがいを徹底し、粘膜の自然治癒を最優先させる必要があります。過度な消毒用エタノールやヨード液の使用は、粘膜の再生を阻害し口腔常在菌のバランスを崩すため厳禁です。