朝6時、乾いた砂煙が舞う土俵。四股を踏む音、すり足の擦れる音だけが静まり返った空間に響く。常盤山部屋の朝は早い。だが、そこにある空気はかつての「理不尽に耐える場」としての稽古場とは明らかに一線を画している。
指導の根底にあるのは、力士自身の自律性を引き出すアプローチだ。親方は弟子たちに対し、なぜその技が決まったのか、なぜ土俵際で足が流れたのかを自らの言葉で説明させる。受動的に言われたことを繰り返すだけでは、緊迫した土俵上で瞬時の判断が下せないからだ。土俵を降りれば、食事の栄養バランスから睡眠の質に至るまで細やかなアドバイスが飛び交う。伝統的な相撲部屋の家族的な絆を大切にしながら、トップアスリートとしての自覚を育てるハイブリッドな環境がここにある。