結論から申し上げますと、「eggslut 新宿サザンテラス店」は2022年10月31日の営業をもって完全に閉店しています。かつて新宿駅南口からサザンテラスへと向かう遊歩道に漂っていた香ばしいバターとスパイスの香りは、すでに過去のものとなっています。
日本第1号店として2019年9月13日に華々しくオープンした同店は、LAのストリートフードカルチャーをそのまま持ち込んだスタイリッシュな外観と、ガラス張りのライブキッチンで一世を風靡しました。オープン直後は最大2時間の待ち時間を記録し、整理券が配られるほどの狂乱ぶりを見せていましたが、わずか約3年強での幕引きとなりました。
では、なぜあれほどの話題を集めた旗艦店が撤退を余儀なくされたのでしょうか。アパレルおよび飲食事業を手がける運営母体「株式会社ベイクルーズ」の戦略、そして新宿という立地特性を検証すると、3つの構造的要因が浮かび上がってきます。
第1の要因は、新宿サザンテラスという立地における「人流の変化」です。同テラスは周辺に大手通信会社やIT企業が密集するビジネス街の導線上にあります。2020年以降のリモートワーク定着によって平日の通勤客数が激減し、日常的な朝食需要が大幅に減少しました。週末のインバウンドや観光需要頼みの運営では、サザンテラス一等地の高額な坪賃料を維持することが困難になったと考えられます。
第2の要因は、出店契約の満了に伴うブランドポートフォリオの再編です。ベイクルーズは「J.S. BURGERS CAFE」やベーカリー「BOUL'ANGE」など多数の飲食ブランドを抱えており、収益性とエリア特性に応じたスクラップ&ビルドを極めて機動的に行います。新宿サザンテラス店は当初からの契約更新タイミングを見据え、無理な延命を行わずに撤退を決断したのが実態です。
第3の要因は、2020年に開業した「渋谷MIYASHITA PARK店」への一本化です。エッグスラットが持つ「高感度なストリートカルチャー」「SNS発信力」というブランドアイデンティティは、オフィス街寄りの新宿よりも、若者や訪日外国人観光客が回遊する渋谷ミヤシタパークの方が圧倒的に親和性が高かったのです。この店舗集約こそが、閉店の決定打となりました。
なお、新宿サザンテラスの跡地区画はその後、サザンテラス全体の回遊性向上を図る新たな商業スペースやポップアップ、別テナントへと転換され、当時の面影は姿を消しています。