日本人の渡航者や出張者が最も足元をすくわれやすいのが、カリブ海屈指のリゾート地カンクンと、米国境の巨大製造業拠点ティフアナにおける特異な時間設定です。ネット上の古いまとめ記事を鵜呑みにしていると、重大なミスにつながります。
まず押さえるべきは、カンクン現在時刻と時差の特殊な立ち位置です。カンクンが属するキンタナ・ロー州は、首都メキシコシティがある中部時間ではなく、意図的に1時間早い「東部標準時相当(UTC-5)」を採用しています。これは2015年、当時の州政府と観光業界が主導して成立させた措置です。最大の観光市場である米国東部(ニューヨークやマイアミ)からの直行便利用客に時差ストレスを与えず、日没時間を1時間遅らせて夕方のビーチアクティビティや消費活動を活性化させる狙いがありました。この設定はサマータイム廃止法案の可決後も例外として維持されており、メキシコシティ現在時間と比べても年中「カンクンの方が1時間進んでいる」状態が継続しています。
一方、対照的な例外ルールを持つのがティフアナ現地時間と時差です。バハ・カリフォルニア州のティフアナは、米サンディエゴと世界最大級の交通量を誇る国境検問所で結ばれており、毎日数万人規模の通勤・通学者が往来します。さらに保税加工工場(マキラドーラ)の物流サプライチェーンが米国側に完全に組み込まれているため、時間を米国と切り離すことは経済的麻痺を意味していました。
このため連邦議会は、バハ・カリフォルニア州全域および北部国境から20キロ圏内の特定自治体について、「米国と完全に同期する夏時間(3月第2日曜から11月第1日曜まで)」の継続運用を法律で認可しました。この国境例外の存在こそが、メキシコ渡航時差真相を複雑にしている最大の要因です。