カタールワールドカップでの勝利に対し、世界中のメディアの一部は「日本の粘り勝ち」「ドイツの決定力不足による事故」と冷ややかな見方を残していました。しかし、そのわずか10カ月後に行われたアウェーでの親善試合は、そうした懐疑論を一撃で粉砕することになります。
2023年9月9日、敵地フォルクスワーゲン・アレーナで行われた親善試合において、日本代表はドイツ代表を4-1で粉砕しました。この試合で日本が見せた戦いぶりは、カタール大会のような耐え忍ぶサッカーではなく、相手のビルドアップを論理的に破壊するアグレッシブな守備戦術でした。
決定的な勝因となったのは、ボランチ遠藤航と守田英正による中央の完全封鎖、そしてサイドでの連動したプレッシングです。右サイドバックの菅原由勢と伊東純也の縦関係がドイツの左サイドを完全に切り裂き、前半11分に伊東が先制。さらに同点に追いつかれた直後の前半22分、流れるようなパスワークから上田綺世が勝ち越しゴールを奪いました。終了間際にも浅野拓磨、田中碧が立て続けにネットを揺らし、ドイツサポーターから激しいブーイングが浴びせられる異様な光景が広がったのです。
この惨敗劇が引き金となり、ドイツサッカー連盟(DFB)は翌日、ハンジ・フリック監督の電撃解任を発表しました。ドイツ代表123年の歴史において、監督が任期途中で解任されたのは史上初という前代未聞の事態でした。後に公開されたドキュメンタリー番組『All or Nothing』では、フリック監督が選手たちとの対話に苦悩し、戦術的な拠り所を見失っていた様子が生々しく記録されていました。組織としての一体感を失っていたドイツに対し、個々が自律しながら明確なゲームモデルを共有していた日本代表が、必然の勝利をもぎ取った瞬間でした。