インターネット上の掲示板やSNSでは、時折「プロの窃盗団はバッテリー式ディスクグラインダーや液体窒素スプレーを持っているため、ハンドルロックバーなど数十秒で切断される」「後付けの棒など気休めに過ぎない」といった極端な言説が散見されます。しかし、犯罪心理学および警察庁の捜査関係者が指摘する現場実態を照らし合わせると、この主張には重大な盲点が存在します。
「5分の壁」が分ける犯行の成否
警察庁や防犯設備協会の調査において確立されている犯罪統計データに、「犯行着手から5分以内に侵入または盗出が完了しない場合、約7割の窃盗犯が犯行を諦める」という事実があります。さらに所要時間が10分を超えると、逮捕リスクを恐れて9割以上がそのターゲットから撤退します。
窃盗グループにとって、最も避けたいのは「予期せぬ時間ロス」と「現場で発せられる金属切断音・火花」です。確かに、工場のような静止環境で大型電動工具を遠慮なく使えば、どんな頑丈なハンドルロックバーも数分で切断可能です。しかし、深夜の住宅街や見通しの良い駐車場において、火花と激しい騒音を撒き散らしながら工具を使う行為は、発見・通報の確率を跳ね上げます。「切断できるか否か」ではなく、「盗み出すまでに面倒な工程が何段階追加されているか」がプロのターゲット選定基準なのです。
ステアリング自体を切断する手口への対抗策
ネットで指摘されるもう一つの手口として、「バーを切断するのではなく、柔らかいウレタンや樹脂でできているステアリングホイールの外周を金ノコで切り欠いてバーを外す」という手法があります。これは事実として確認されている手口です。
しかし、近年の高性能ハンドルロックバーはこうした手口を完全に織り込んで設計されています。ホーンパッド全体を覆うワイドプレート構造を採用した製品では、ステアリングの一部をカットしてもバーがホーンに密着し、無理に外そうとするとクラクションが鳴り響く構造になっています。ネット上の「時代遅れの知識」に惑わされず、最新の対抗設計が施された製品を選択することが肝要です。