エレベーターという移動空間にトイレが設置される最大の理由は、震災時におけるエレベーター閉じ込め対策の必須インフラとして機能させるためだ。地震の揺れを感知した安全装置が作動すると、エレベーターは最寄り階へ自動停止するよう設計されている。しかし、強い揺れで昇降路内のレールが歪んだり停電が重なったりすると、階と階の間で完全に停止して外部と遮断されてしまう。
首都直下地震などの大規模災害が発生した場合、保守点検員が一基ずつ現場を回って手作業で救出を行うため、救出体制がパンクすることは避けられない。過去の震災データや公的機関のシミュレーションによると、エレベーター閉じ込め平均時間は数時間から、被害が甚大なケースでは10時間以上に及ぶと試算されている。夏場の猛暑や冬場の極寒の中、狭小な空間で排泄を我慢し続けることは健康被害だけでなく、深刻な精神的パニックを引き起こす原因となる。
こうした極限状態において、乗客のプライバシーと衛生環境を確保し、救出までの時間を耐え抜く最後の生命線としてエレベーター内簡易トイレの常設が進められている。