この疾患の歴史は、1912年に九州大学の医師であった橋本策(はかる)が世界で初めて報告した学術論文に端を発する。当時、リンパ球が甲状腺組織内に大量に浸潤する特異な病態を「リンパ腫性甲状腺腫」として提唱したことが、現在の病名へとつながった。
病理学的な本態は慢性甲状腺炎である。自己の免疫系が暴走し、甲状腺マイクロゾーム(ペルオキシダーゼ)抗体やサイログロブリン抗体といった自己抗体を産生してしまう。攻撃を受けた甲状腺組織は徐々に破壊され、線維化が進む。なぜ自己寛容が破綻するのか。遺伝的素因に加え、強い精神的ストレス、出産、過剰なヨウ素摂取などの環境因子が引き金になると考えられている。