単なるタレントのオフショット投稿が、なぜ日本中を巻き込む一大トレンドへと膨れ上がったのか。そこにはインターネット文化特有の心理的動機が幾重にも重なり合っていました。
第一に挙げられるのは、「公式公認という大義名分(免罪符)」の獲得です。従来のファン心理において、憧れの芸能人の写真を保存したり「自分の恋人だ」と公言したりする行為は、痛々しいファン心理として冷笑されるリスクを孕んでいました。ところが、タレント本人が「使っていいよ」と公認したことで、ユーザーは「ネタとして楽しんでいる」という安全な免罪符を手に入れ、堂々とSNS上で妄想を共有できる心理的解放感を得たのです。
第二に、「ネタとしての共犯関係と参加ハードルの低さ」です。このミームの面白さは、文字通りに信じる人がいない点にあります。「いや、お前の彼女じゃないだろ」「無理がありすぎる」というフォロワーからのツッコミ待ちというコミュニケーション様式が成立しており、誰も傷つかない大喜利として参加しやすい構造が整っていました。
第三に、メディア接触の「脱・偶像化」と「日常への侵食」です。スタジオで撮影された完璧な宣材写真ではなく、移動中の車内や飲食店、街頭でスマートフォンによって撮影された「粗削りなアングル」が、ユーザーに「自分だけが見ている景色」という強烈なパラソーシャル(疑似的)相互作用をもたらしました。