「やじろべえ」のルーツを辿ると、創業明治十年を誇る老舗企業、株式会社歌行燈(うたあんどん)に行き着く。桑名の地で産声を上げた伝統の技が、現代の外食産業の波に揉まれながらも、この一杯の丼の中に息づいている。
看板である手延べうどんは、機械製麺では決して出せない滑らかな喉ごしと、押し返すような弾力が持ち味だ。熟成を重ねた生地を丹念に延ばすことで生まれる不揃いな麺肌が、鰹と昆布を贅沢に使った黄金色のつゆをしっかりと抱え込む。啜った瞬間のつるりとした感触、その直後に広がる出汁のコク。効率化を優先しがちなチェーン展開の中で、この手間暇を惜しまない姿勢は特筆に値する。