布地の挙動はすべて物理法則に従っています。服のシワの構造と法則を理解する上で、プロの現場ではシワを主に「引っ張りシワ(テンション)」「たわみシワ(圧縮・重力)」「パイプ状シワ(ドレープ)」の3系統に分類して作画します。
シワを描く際は、まず「布を固定している支点」を探します。シャツにおける主な支点は「肩先」「ボタン留め位置」「肘」「脇の下」です。これらの支点同士が引っ張り合う部分には直線的で鋭いシワが走り、支点から解放されて布が余る部分にはU字やS字を描く柔らかいたわみシワが発生します。
特に作画頻度の高い袖と腕のシワの描き方では、関節の屈曲に応じた変化を把握することが必須です。腕を曲げた時、肘の内側には布が挟み込まれて放射状の強い圧縮シワが集中し、外側は布が突っ張ってシワが伸びます。袖口(カフス)周りでは、細い手首に向かって布が集まるため、ボタン留めの手前に小さなギャザー(布の寄り)を描き込むことで、仕立て服特有の上品な質感が表現できます。
また、ポーズごとの服のシワ変化として、腕を大きく上げたポーズでは「脇の下」が強烈な支点となり、胸や背中の布がすべて脇に向かって放射状に引っ張られます。身体をひねるポーズでは、胸と腰の回転差によって胴回りに斜めの螺旋状シワが走ります。ポーズの動線と支点を結ぶベクトルを意識することが、シャツのシワの描き方における最大の秘訣です。