釣り人の間で「肝パン」と称されるカワハギの肝臓は、脂質含有率が40%〜50%以上にも達するデリケートな器官です。水産研究機関の食品生化学データによると、魚類の血液中に含まれるヘモグロビンや鉄分は、死後硬直とともに急速に酸化が進み、過酸化脂質と結びつくことで特有の生臭み成分(ヘキサナールやトリメチルアミンなど)を生成します。
特にカワハギの場合、肝臓内に微細な毛細血管が網の目のように張り巡らされています。完全に血を抜かずに死なせてしまうと、血液が肝内部に鬱血(うっけつ)して赤黒く変色し、苦味や生臭さの原因になります。また、暴れさせて疲弊死(野締め)させると、筋肉中のアデノシン三リン酸(ATP)が急激に消費され、乳酸が蓄積して白身の透明度と歯ごたえが著しく損なわれます。
「脳締め」で即座に脳からの信号を遮断して暴れを防ぎ、心臓が動いているわずかな時間内に「エラ膜の切断」を行って海水中へ放血させること。この一連の工程を釣り上げ後1分以内に行うことこそが、雑味のないクリーミーな肝と弾力ある刺身を実現する絶対条件です。