なぜ人々は数時間待ってでも、この一杯を求めるのでしょうか。その理由は、創業者・竹井寅次氏が築き上げた伝統製法を愚直なまでに守り抜く、妥協なき職人技にあります。
「とら食堂 松戸分店」の最大のアイデンティティは、店内の製麺室で毎朝丹念に打たれる自家製の手打ち多加水縮れ麺です。小麦の風味を最大限に引き出し、青竹打ちの技術と熟成によって生まれる不規則なウェーブは、すするたびに唇を心地よく刺激し、豊かな弾力と喉越しを両立させています。
スープは、丸鶏・鶏ガラ・豚骨を惜しみなく使い、じっくりと炊き出された清湯仕立て。そこに伝統の木桶仕込み醤油を使ったカエシが合わさり、芳醇な香りとキレのある旨味が口内いっぱいに広がります。表面に浮かぶ上質な鶏油(チーユ)がスープに奥行きと適度な保温性を与え、最後の一滴まで冷めることなく飲み干せるバランスです。
そして、常連客の約7割が注文する圧倒的人気メニューが「ワンタン麺」です。まるでシルクのように極薄の皮で包まれたワンタンは、スープをたっぷり吸い込みながらチュルリと舌の上を滑り落ちていきます。中の肉餡は生姜が効いた小ぶりなサイズ感で、皮のピロピロとした食感を邪魔しません。さらに、炭火でじっくりと燻製焼きにされたモモ肉や肩ロースの焼豚(チャーシュー)は、ピンク色の縁取りと芳ばしい燻煙の香りを纏い、噛むほどに赤身の濃厚な旨味が溢れ出します。