物語のクライマックスにかけて、樹理の暴走はもはや誰にも止められない領域へと達します。真澄を精神的に限界まで追い詰め、一度は夫婦の絆をズタズタに引き裂くことに成功した樹理でしたが、彼女の凶行の背景にあった「孤独の根源」が次第に浮き彫りになっていきます。樹理が抱えていたのは、母親からの愛情飢餓と、自らの存在意義を兄の存在にしか見出せないという深刻な精神的破綻でした。
最終回において、樹理が張り巡らせた嘘と策略のすべてが白日の下に晒されます。樹夫は、妹として救おうとしていた存在が自らの家庭を破壊した張本人であったという残酷な真実を突きつけられ、激しい葛藤に苛まれます。追い詰められた樹理は、自らの手で全てを清算しようとするかのように、破滅的な行動へと身を投じます。
クライマックスの対峙において、真澄は憎悪を越えて樹理の哀しい心の闇に直面し、樹夫は自らの優柔不断さが招いた罪の重さを噛み締めながら、樹理の狂気を受け止めようとします。すべてを奪い去ろうとした樹理は、最終的に自らの愛が誰にも届かない妄執であったことを悟り、法と精神の裁きを受ける形で物語から退場を余儀なくされます。残された樹夫と真澄の夫婦もまた、元通りの無邪気な幸せに戻ることはできず、深い爪痕を背負いながら再出発を誓うという、ほろ苦くも重厚な余韻を残す幕引きとなりました。