香ばしい焼き目、すなわちメイラード反応を効率よく引き出すためには、徹底的な「水分の排除」が欠かせない。肉の表面が湿っている状態では、気化熱によって表面温度が100度近辺に留まり、香気成分が生成される150度以上に到達しないからだ。ペーパータオルで肉の表面を執拗なまでに拭き取る作業は、調味以前の絶対条件といえる。
塩を振るタイミングについても、かつて信じられていた通説が見直されている。焼く直前に振るか、あるいは40分以上前に振るかの二択しかない。塩を振って5分から15分の間は、浸透圧によって内部から水分が表面へ浮き出し、最もベタつく魔の時間帯となる。クックパッドなどのコミュニティで共有される家庭の失敗談の多くは、この水分過多の状態で火にかけてしまい、肉を「焼く」のではなく「茹でて」しまっている点に起因している。