精神分析の祖ジークムント・フロイトは、発達段階における最初のステージとして「口唇期」を定義した。乳幼児が母乳を吸う行為を通じて安心と快楽を得るように、口唇は人間が世界と安全に関わるための最初のインターフェースである。強いストレスやアルコールの介入によって自我機能が後退したとき、大人は容易にこの段階へと「退行」する。
日本心理学会のシンポジウムなどでも度々議論されてきたが、過度のスキンシップ行動は、乳幼児期における愛着形成の不安定さや、未消化の依存欲求が形を変えて噴出しているケースが少なくない。タバコを過剰に吸う、爪を噛む、過食に走るといった行動と同列の地平に、他者への無差別なキスが存在する。満たされなかった乳児が母の胸をがむしゃらに探すように、彼らは夜の街で他者の唇を探し求めているのだ。