実の兄弟でありながら、異なるアプローチで時代を支配した岸信介と佐藤栄作。岸が冷徹なリアリズムと剛腕で安保改定を断行したのに対し、弟の栄作は「人事の佐藤」と評される周到な人心掌握術で連続在任記録を打ち立て、沖縄返還と非核三原則を実現した。この二人が敷いたレールが、その後の自由民主党による長期単独政権の骨格を完成させた。
政治思想のグラデーションを持ちながらも、国家観の根底で共鳴し合っていた二人。彼らが交代で総理の座に就いた時代、権力はまさに一つの血族の中を行き来していた。昭和史の激動期において、兄弟が演じた政治的役割の重みは、他国の政治体制を見渡しても類例を見ない。