戦後、この悲劇は自由を求めて闘った人々の象徴として文化芸術のなかで甦ることになる。その代表作が、巨匠・黒澤明監督が1946年に世に送り出した傑作映画『わが青春に悔なし』だ。滝川の境遇やゾルゲ事件に関与した尾崎秀実をモデルに、国家の暴走に抗い自らの信念を貫いた若者たちの気高い生き様を鮮烈に描き出した。
激動の時代を背景にした社会派政治ドラマとしての完成度は極めて高く、ヒロインが過酷な現実に立ち向かう姿は敗戦直後の日本人に深い勇気を与えた。スクリーンに刻まれたあの熱量は、表現者たちが権力の横暴をどう記憶し、次の世代へ語り継ごうとしたかを示す貴重な文化的証言といえる。