なぜ米作りには「八十八の手間」がかかると語られてきたのでしょうか。その八十八の手間 理由を単なる語呂合わせと片付けることはできません。漢字の「米」を分解すると「八十八」になるという伝承の裏には、種選びから始まり、土壌のpH測定、苗代の温度調節、毎朝夕の水見(みずまわ見回り)、畔(くろ)の草刈り、害虫防除、溝切り、秋の乾燥調整に至るまで、文字通り88回以上の決断と手作業が積み重なっている現実があります。
米作りの苦労と工夫を取材すると、近年の気候変動による猛暑が最大の障壁として浮かび上がります。出穂期に記録的な高温が続くと、米が白く濁る「白未熟粒」や割れ米が発生しやすくなります。これに対し、全国の先進農家では以下のような工夫を凝らして品質を死守しています。
- 夜間灌漑(かんがい)の徹底:日中の猛暑で熱を持った田んぼに、冷涼な夜間〜早朝に水を流し込んで地温を下げ、稲の消耗を防ぐ。
- スマート水田センサーの配備:田んぼの水位・水温を遠隔でリアルタイム監視し、スマートフォンから自動給水弁を開閉して水管理の負担を半減させる。
- 有機質資材による土壌の団粒化:堆肥やケイ酸質肥料を計画的に投入し、高温下でも根腐れを起こさない強固な土壌生態系を構築する。
「米作りは毎日田んぼに足を運んで、稲の顔色を見ることがすべて。水門をほんの数センチ開けるか閉めるかの判断が、秋の等級を決定づけます」と語る生産者の言葉どおり、自然相手の緻密な観察力こそが品質を支えています。