平山郁夫は日本美術院の理事長を長く務め、近代以降の日本画壇を牽引する存在でもあった。しかし、彼の描く日本画は、伝統的な花鳥風月や情緒的な風景描写にとどまらない。岩絵の具特有の粒子感と重厚なマチエールを駆使し、砂漠の静けさや月光の冷徹な輝きを表現した独自の画風は、日本画の表現領域を劇的に拡張した。
かつて社会現象を巻き起こしたNHKスペシャル「シルクロード」で題字やビジュアルを手がけ、日本中にお茶の間発のシルクロードブームを巻き起こした背景には、確固たる日本画の技法に裏打ちされた圧倒的な描写力があった。展示室に掲げられた大画面のキャラバンを描いた作品群は、伝統と革新が奇跡的なバランスで拮抗していた時代の熱量を今に伝えている。