日本屈指の湧出量を誇る別府温泉。その中でもひときわ濃厚な情緒を漂わせるのが鉄輪温泉(かんなわおんせん)エリアだ。住宅地や旅館の屋根の隙間から立ち上る無数の湯煙は、この土地で生きる人々の営みそのものであり、地球の鼓動の可視化でもある。
昼間は青空に溶け込む柔らかな白煙だが、夜の帳が下りるとその表情は一変する。街のナトリウム灯やサーチライトが蒸気に乱反射し、幻想的な光の柱となって浮かび上がるのだ。この唯一無二の景観が高く評価され、2010年には「日本夜景遺産」のライトアップ夜景遺産に認定された。
湯けむり展望台から見渡すパノラマには、過度な人工的演出に頼らない本物の情緒が宿っている。ただ派手なだけの都会の摩天楼とは一線を画す、温かくどこか懐かしい光のグラデーションがここにはある。