横浜の歴史的中心地に佇む関内駅北口の天ぷら「天吉」の歴史は、明治5年(1872年)の鉄道開通と同じ年に幕を開けました。文明開化に沸く横浜の港町で、初代が屋台から立ち上げた天ぷらの味は、関東大震災や横浜大空襲といった幾多の苦難を乗り越え、現当主へと受け継がれています。
天吉を語る上で欠かせないもう一つの側面が、サザンオールスターズの原由子さんの実家であるという事実です。ファンの間では「サザンオールスターズの聖地・関内」の筆頭格として親しまれ、店内にはさりげなくファンの心をくすぐる装飾や温かいもてなしの空気が息づいています。
音楽ファンにとって特別な場所でありながら、天吉が決して「タレントショップ」化しない理由は、創業150余年の歴史に裏打ちされた本物の職人技にあります。全国から訪れるサザンファンと、何十年も通い詰める地元の常連客が同じ空間で舌鼓を打つ光景こそ、天吉が持つ独自の懐の深さを示しています。