患者の間で根強く信じられている最大の迷信が、「一度注射で膝の水を抜くと癖になって何度もたまるようになる」という言説です。断言しますが、「抜いたから癖になる」という因果関係は医学的に完全な誤りです。
実際には、関節内の炎症という「火元」が鎮火していないため、水を抜いて圧力を下げても再び滑膜から液が滲み出しているに過ぎません。風邪で鼻水をかんだからといって、鼻水をかんだ行為が原因で次の鼻水が出るわけではないのと同じ理屈です。
むしろ、パンパンに張った関節水腫を「癖になるから」と恐れて放置することには甚大なリスクが伴います。異常にたまった関節液の中には、軟骨を分解してしまう酵素(サイトカインなど)が大量に含まれています。有害な物質を含む高圧の液体に関節全体が長期間浸かり続けることで、軟骨の破壊が加速度的に進行してしまうのです。強い緊縛感や痛みがある場合は、適切な治療法として速やかに水を抜き、関節内の圧力を除荷して軟骨への二次被害を防ぐことが先決です。