将来子どもを持つことを考える際、避けられないのが「遺伝」に関する疑問です。マルファン症候群は常染色体顕性(優性)遺伝の形式をとり、片方の親が患者である場合、性別に関わらず子どもへ変異が受け継がれる遺伝確率は50%(2分の1)となります。なお、患者の約25%は家族歴のない突然変異(孤発例)によって発症します。
遺伝の有無や変異箇所の特定には遺伝子検査が有効であり、血液採取によるDNAシークエンス解析によって行われます。遺伝カウンセリングを受けることで、確率の数字だけにとらわれず、もし遺伝していた場合にどのような医療体制でサポートできるかを事前に理解し、家族として冷静な意思決定を下すサポートが得られます。
一方で、かつて「30〜40代で命を落とす」と恐れられた平均寿命の常識は完全に過去のものとなりました。大動脈の拡大を早期に発見する心エコー検査の普及、血圧をコントロールして血管への負荷を抑えるβ遮断薬やARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)による薬物療法、そして破裂前の予防的血管置換術の確立により、適切な管理下にある患者の寿命は一般的な平均寿命とほぼ同等(70歳以上)まで延びています。早期診断と定期受診を継続していれば、過度に寿命を恐れる必要はありません。