安室奈美恵の全盛期を論じる際、単一の時期を特定することは極めて困難です。なぜなら彼女は、日本の音楽産業史において極めて稀な「二度の明確な全盛期」を経験した唯一無二の表現者だからです。
一般的なアーティストの多くは、デビューから数年でキャリアハイを迎え、その後は安定期あるいは緩やかな下降線を辿ります。しかし安室奈美恵の場合、1990年代中盤に巻き起こした日本列島規模の「アムラー現象」という第1のピークを経て、結婚・出産・悲痛なプライベートの試練・小室ファミリーからの独立という低迷期を経験しました。そこからストイックなまでにダンスとヴォーカルを磨き上げ、2008年のベストアルバム『BEST FICTION』で再び音楽チャートとドームツアーの頂点へ返り咲くという、前代未聞の軌跡を描いたのです。
ネット上の議論や音楽ジャーナリズムの論評を見ても、「社会的影響力の凄まじさなら90年代」「アーティストとしての完成度とライブのクオリティなら2000年代後半から引退まで」と意見が真っ二つに分かれます。この二重構造こそが、彼女を単なる“ヒット歌手”ではなく“伝説”たらしめている最大の要因です。