芋煮を語る上で避けて通れないのが、山形と宮城による「味付けと肉の覇権争い」です。メディアではしばしば「東北芋煮戦争」と面白おかしく報じられますが、それぞれの仕立てには明確な地理的・歴史的必然性があります。
山形県内陸部(山形市、米沢市など)のスタンダードは、山形芋煮醤油牛肉スタイルです。甘辛い醤油ベースのつゆに、薄切りの牛肉、里芋、こんにゃく、ねぎが絡み合い、すき焼きにも通じる濃厚なコクと芳醇な香りが特徴です。
対する宮城県(仙台市周辺)は、宮城芋煮味噌豚肉違いが鮮明な豚汁進化系スタイルです。仙台味噌をベースにした奥深い汁に、豚肉、里芋、大根、にんじん、ごぼう、豆腐などがどっさりと投入され、具だくさんで滋味深いスープとして成立しています。
なお、山形県内でも日本海側に位置する庄内地方(鶴岡市・酒田市など)では、内陸の醤油牛肉とは異なり、「豚肉・味噌仕立て・厚揚げ入り」が主流です。これは庄内浜の海運と、養豚が盛んだった歴史的経緯によるものであり、「山形県内ですら一枚岩ではない」という事実が、この食文化の重層的な面白さを物語っています。