『ルマ』を語る上で避けて通れないのが、莉犬氏(すとぷり)への提供曲バージョンと、かいりきベア氏自身のチャンネルで公開された初音ミク歌唱バージョンの存在です。両者は同一のメロディと歌詞を持ちながら、表現のアプローチにおいて驚くほど鮮やかな対比を見せています。
莉犬氏のバージョンは、生身の人間だからこそ出せる「エモーションの爆発」が全面に押し出されています。時に自嘲し、時に泣き叫ぶかのような息遣い、「ワオーン」という遠吠えに込められた生々しい感情の揺らぎは、活動者として矢面に立ち続ける彼自身の孤独や決意とシンクロし、圧倒的な説得力を生み出しました。
対して初音ミク版は、ボーカロイド特有の無機質さと機械的な高速発声が、楽曲の狂気性を研ぎ澄ませています。一切の感情を排したかのように淡々と、されど暴力的なテンポで放たれるフレーズは、人間味を奪われたシステムそのものが暴走しているかのような不気味さと中毒性を醸成しています。
かいりきベア氏の代表曲一覧(『ベノム』『アンヘル』『ダーリンダンス』『バグ』など)を俯瞰しても、『ルマ』は「アーティストへの提供楽曲」と「ボカロカルチャーの純血作品」がこれ以上ない形で融合し、双方のリスナー層を爆発的に拡大させた稀有なターニングポイントとして位置づけられます。