バトル漫画やフィクションの世界には、キャラクターが未来の希望や平穏な生活を口にした直後に命を落とすという「お約束」が存在します。しかし、『ジョジョ5部 黄金の風』におけるナランチャの死亡フラグ回収は、その完成度と落差の激しさにおいて別格の存在感を放っています。
ローマのコロッセオ周辺で繰り広げられるポルナレフの暴走スタンド「チャリオッツ・レクイエム」を巡る混戦の最中、ナランチャはおもむろに勝利後の展望を語り始めました。これがファンの間で語り継がれる、ナランチャの「学校へ行く」セリフです。
「オ…オレ…故郷に帰ったら学校行くよ…」「頭が悪いって他のヤツらにバカにされるのもけっこういいかもな…」「あつあつのピッツァも食いてえ!故郷のキノコがのっかったヤツをよォ!」
かつて親友に裏切られ、目の病気を患って少年院へ送られ、社会の底辺で絶望していたナランチャにとって、教育を受けることや温かい食事を仲間と囲むことは、人間としての尊厳を取り戻すための切実な目標でした。ブチャラティという絶対的な光に出会ったことで閉ざされていた未来が開け、自立への希望を言葉にした名場面です。しかし、緊迫した戦場で語られたあまりに無防備な告白は、直後に訪れる悲劇へのカウントダウンとなってしまいました。
ファンの間では、第1部のダイアー(「ツェペリさんとは共に苦行を乗り越えた…」)、第2部のマルク(「来週ですねドイツへ帰ったら結婚するんス」)と並び、「ジョジョ三大死亡フラグ」の筆頭格として定着しています。台詞を言い終えて間もなく、読者が息を呑む間さえ与えずに命を奪われるという電撃的な展開は、荒木作品ならではの容赦ないリアリズムを象徴しています。