二人の出会いのきっかけは、他ならぬマラソンの取材現場でした。国内外の主要レースや過酷な合宿地に帯同していた夫が、レンズ越しに野口みずきのストイックな走りを見つめ続けるなかで、徐々に信頼関係が芽生えていきました。
単なる「取材対象とメディア関係者」という枠組みを超え、長年にわたって良き友人としての交流が続いていましたが、二人の絆を決定的なものにしたのは、野口みずきを襲った度重なる怪我と苦悩の時期でした。
2004年アテネ五輪で金メダルを獲得し、2005年ベルリンマラソンで2時間19分12秒という驚異的な日本記録(当時)を樹立した野口みずきでしたが、2008年北京五輪は直前の左太もも肉離れによって無念の欠場を余儀なくされます。その後も足底腱膜炎や度重なる故障に見舞われ、引退の危機と常に隣り合わせの日々が続きました。
精神的にも追い詰められていたその過酷な期間、夫は常に一定の距離感を保ちながらも、温かい言葉と誠実な態度で彼女を支え続けました。競技者としてではなく「一人の人間・野口みずき」に寄り添い続けたパートナーの存在が、彼女が2016年名古屋ウィメンズマラソンまで現役を全うする原動力となったのです。