メキシコを訪れた旅行者や駐在員が異口同音に驚くのが、街中に翻る国旗の巨大さと、人々の国旗に対する並々ならぬ敬意と愛情です。
首都メキシコシティの中心部「ソカロ広場(憲法広場)」には、ビルの数階分に匹敵する超巨大な国旗(モヌメンタル旗)が掲揚されています。毎朝夕に行われる軍の厳粛な儀式では、足を止めた市民や子どもたちが胸に手を当てて国歌を斉唱する姿が日常的に見られます。毎年2月24日は国民の祝日「国旗の日(Día de la Bandera)」に定められており、学校や公共機関で式典が盛大に執り行われます。
現地コミュニティやSNS上でのリアルな市民の声を検証すると、国旗に対する誇りの根底には「メスティーソ(混血)としてのアイデンティティ」が存在していることが分かります。
「私たちの旗には、スペインから持ち込まれた三色の形式と、祖先であるアステカの神話が一つになって描かれている。二つの異なるルーツが対立するのではなく、融合してメキシコという唯一無二の国になった証拠なんだ」(メキシコシティ在住・30代教員の談話)
植民地支配の痛ましい記憶と、誇り高き先住民族の叡智。その相克を乗り越えて一つの国民として手を取り合うための強力な結束装置として、国旗が機能しているのです。