日本の大衆向けラーメン店で生まれた食器が、アメリカ・ニューヨークの美の殿堂を唸らせたという事実は、日本のプロダクトデザイン史における痛快なエピソードのひとつです。
2007年に刷新された新モデルは、その年のうちにニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーターの目に留まりました。「一本で二つの役割を果たす」という合理的な機能性と、無駄を削ぎ落とした彫刻のような美しい曲線美が高く評価され、MoMAデザインストアのラーメンフォークとして正式にセレクト販売が開始されたのです。
MoMAが着目したのは、西洋のパスタフォークとも東洋の散蓮華(レンゲ)とも異なる、ハイブリッドな道具としての独自性でした。ラーメンという日本独自の食文化が世界へ拡散していくなかで、箸の扱いに不慣れな欧米の人々にとっても直感的に扱えるデザインは、まさに「異文化を繋ぐインターフェース」として絶賛されました。現在でもMoMAのミュージアムショップでは、日本の優れた工業デザインを象徴するロングセラーアイテムとして確固たる地位を築いています。