一般的な食品スーパーにおいて、大手メーカーのアイスクリームは定価(希望小売価格)の1〜2割引き程度が販売限界とされています。これに対し、ディスカウント業態各社がメーカー希望小売価格の4〜5割引きを日常的に提示できる最大の背景には、アイスクリームという商品の法的な特性が関係しています。
食品表示基準において、アイスクリーム類はマイナス18度以下で適切に冷凍保存されていれば品質変化が極めて生じにくいことから、賞味期限の表示を省略できると定められています。生鮮食品や一般的な日配品のように「日付が迫って廃棄処分になるリスク」が事実上存在しないため、小売側は賞味期限切れによるロス率をゼロとして原価計算を組み立てられます。さらに、冬場の閑散期にメーカーの生産ライン稼働率を維持したい工場側から、ディスカウントチェーンが大量一括発注(パレット単位・コンテナ単位)で買い叩くことにより、仕入れ原価そのものを大幅に引き下げています。
もう一つの決定的な要因は、店舗全体の客単価を引き上げるためのロスリーダー(おとり商品)戦略です。冷凍ショーケースを電気代のかかるアイスで満たし、利益を削ってでも「あの店はアイスが常に半額だ」という強烈なシグナルを消費者に植え付けます。来店した買い物客がアイスだけでなく、利益率の高い精肉や生鮮惣菜、一般日用品をまとめ買いすることで、店舗トータルの粗利率を確保する構造が成立しています。