料理サイトやSNSのコミュニティで頻繁に交わされる議論の中に、「無洗米がうまく炊けない」「新米を炊いたらベチャベチャになった」という失敗談があります。これらは、お米の精製プロセスと現代の流通技術に対する誤解が主な要因です。
まず押さえるべきは、無洗米の水加減と注意点です。全国無洗米協会の公表データによると、無洗米は通常の精米表面に付着している「肌ぬか」があらかじめ除去されています。そのため、一般的な白米用計量カップで計ると、ぬかが無い分だけ米粒同士の隙間が埋まり、1カップあたりの正味重量が約5%(約8〜10g)多く充填されます。つまり、米の粒数そのものが多くなっているため、通常と同じ水加減で炊けば「水不足=パサパサ・固い」状態になるのは物理的に当然の帰結です。無洗米専用カップを使用するか、通常カップなら1合につき大さじ1〜2杯の水を意識的に足す必要があります。
一方で、新米を美味しく炊く水の量に関する迷信も見逃せません。昭和の時代には「新米は水分を多く含んでいるから水を大幅に減らせ」と口伝されていましたが、近年のカントリーエレベーター(大規模乾燥貯蔵施設)における水分調整技術は極めて高度化しています。市場に出荷される米は、銘柄や収穫時期を問わず水分含有率14〜15%前後に厳密に均一化されています。水分が多いと感じるのは米の細胞壁が柔らかく吸水スピードが速いためであり、実質的な内部水分が極端に高いわけではありません。昔の感覚で水を10%以上も減らしてしまうと、芯の残る固いご飯になってしまいます。減らすとしても大さじ半分から1杯程度(全体の2〜3%減)に留めるのが、現代の調理科学における共通認識です。