X(旧Twitter)をはじめとするSNSで定期的に議論を巻き起こす「DTM作曲をなめるな」というハッシュタグや言説。音楽メディアの調査やWeb上の制作コミュニティでの言及を紐解くと、この言葉には大きく分けて2つのまったく異なる文脈が交錯していることが浮き彫りになります。
ひとつは、広告や一部のインフルエンサーが発信する「スマホ1台で誰でも簡単に神曲が作れる」「知識ゼロで即日マネタイズ可能」といった安易な煽り文句に対する、現場のプロやベテラン作家からの強い異論です。ボカロPとして活動するクリエイターの「れお」氏は、自らの制作手記において「『金儲けをしたい人』『安易に承認欲を満たしたい人』に対しては『DTMを舐めるな』という言葉に100%同意する。なぜなら音楽制作は決してそんな甘い世界ではないからだ」と語っています。手軽さを信じて飛び込んだ初心者が、操作マニュアルの分厚さや音作りの泥臭さに直面して即座に脱落していく姿を数多く見てきたからこその、現実的な警鐘と言えます。
一方で、専門情報サイト「96bit-music」などが指摘するように、この言葉が独り歩きすることで「高度な音楽理論と高額機材がなければ曲を作ってはいけない」という敷居の高さとして初心者に誤解されている側面も否定できません。本来の文脈は「甘い見通しで参入して自己嫌悪に陥るのを防ぐための現実提示」であるにもかかわらず、ネット上では「初心者を威圧する排他的な言葉」として受け取られ、炎上や反発を招くサイクルが定着してしまっているのが実情です。