中学校1年の国語教科書(光村図書)に長く採用されている一川誠氏の『時計の時間と心の時間』は、論説文の基本構造を学ぶ上で極めて秀逸なテキストです。テスト対策やワークの演習において高得点を狙うためには、まず筆者が論理をどのようなステップで組み立てているかを正確に把握する必要があります。
文章全体は、大きく「序論」「本論」「結論」の3部構成で整理されます。それぞれの役割と要約ポイントは以下の通りです。
- 序論(問題提起):「時計の時間」と「心の時間」という2種類の間隔が存在することを示し、同じ1時間でも状況によって長く感じられたり短く感じられたりする身近な事実を提示する。
- 本論(具体例と実験的根拠):心の時間が変化する要因を科学的に分析。楽しい作業をしているときは時間が短く感じられ、退屈なときや待たされているときは長く感じられること、また年齢によっても時間の感じ方が異なることを具体的に解説する。さらに、時計の時間が社会生活において人々を行動を合わせるための共通基準として不可欠である点も併せて論じる。
- 結論(筆者の考えと主張):近代社会は時計の時間に過剰に依存しがちであるが、時計の時間だけに縛られると精神的なゆとりを失ってしまう。双対する2つの時間の特徴を理解し、生活の中で上手に調和させながら豊かに生きていくべきだという提言で結ばれる。
教育現場の国語指導主事によると、定期テストや入試の読解問題で最も頻出するのは、「時計の時間の利点と問題点」「心の時間の豊かさと注意点」を対比させて記述させる設問です。筆者は決して「時計の時間を捨てて心の時間だけで生きよう」と主張しているわけではありません。社会的な調和を保つ客観的時間の重要性を認めつつも、個人の内面的な充実を図るために心の時間のゆらぎを受け入れるという、バランスの取れた共存の知恵を説いている点を見落とさないことが得点の要となります。