八相の構えは実戦で使えないのか?兜の謎と五行の極意を徹底解剖

八相の構えは実戦で使えないのか?兜の謎と五行の極意を徹底解剖

八相の構えは実戦で使えないのか?兜の謎と五行の極意を徹底解剖とはどのようなものなのか? 詳しい意味を丁寧に紐解いて紹介します。

八相の構えを語る上で欠かせないのが、中世から戦国時代にかけての戦場における「甲冑(鎧兜)」との物理的な関係性です。現代の剣道では頭上に刀を掲げる「上段の構え(火の位)」が強力な攻撃の構えとして認知されていますが、合戦場においてこの上段をとることは物理的に極めて困難でした。

その決定的な理由が、戦国武将が身につけていた兜の前立てや吹き返しとの物理的干渉です。武士の兜には、家紋や信仰を表す巨大な鍬形(くわがた)、三日月、鹿角といった前立てが装着されていました。両手で太刀を頭上高く振りかざす上段をとろうとすると、刀の鍔や柄、あるいは自身の腕がこれらの装飾や錏(しころ)に激突してしまい、刀をスムーズに振り下ろすことができません。

そこで必然的に生み出されたのが、太刀を頭上ではなく右耳の横に立てる八相の構えでした。この位置であれば、どれほど長大で派手な前立てを備えた兜を着用していても、一切干渉することなく刀を保持できます。さらに、兜の重みによって首や視野が制限される状況下でも、八相であれば視界を広く保ちながら、相手の首筋や草摺(くさずり)の隙間といった甲冑の急所へ最短距離で斬り下ろすことが可能でした。過酷な合戦場における生存競争から導き出された、極めて合理的な機能美が八相の構えには宿っています。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。