現在、大手ECモールやSNSの動画広告において、「針刺し不要!手首で血糖値がリアルタイムに測れるスマートウォッチ」と銘打たれた数千円から1万円台の製品が多数販売されています。しかし、これらの製品が主張する血糖値測定機能は、科学的根拠を欠いた極めて危険なものであると認識しなければなりません。
米国食品医薬品局(FDA)は公式声明を発表し、「手首などの皮膚を貫通することなく血糖値を測定できると主張するスマートウォッチやスマートリングを購入・使用しないよう、消費者、患者、医療従事者に強く警告する」と異例のセーフティコミュニケーションを発令しました。日本国内においても、厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)から医療機器承認を取得した「非侵襲血糖値測定スマートウォッチ」は2026年現在、一台たりとも存在しません。
では、それらの製品はなぜ「それらしい数値」を表示するのでしょうか。医療機器開発に携わる研究者がこれらの格安デバイスを分解・検証したところ、内蔵されているのは安価な心拍センサーと体温センサーのみであり、あらかじめプログラムされた擬似乱数や、脈拍数から統計的に推定しただけのデタラメな数値を画面に出力しているだけの実態が暴かれています。机の上やリンゴの皮に巻きつけても「正常値(105mg/dLなど)」が表示される検証動画がSNS上で拡散され、大きな問題となりました。
糖尿病を抱える方がこうした製品の数値を信じ、インスリン注射の投与量を自己判断で調整したり、投薬を中断したりすれば、重篤な低血糖昏睡や糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こし、生命に関わる事態に直結します。「手軽だから」「安いから」という理由で未承認の測定機器に手を出すことは、自らの命を危険に晒す行為に他なりません。