動画共有サイトや都市伝説系のWebメディアで、「世界一画数の多い漢字は1024画である」「172画の文字が見つかった」といったセンセーショナルな見出しを見かけることがあります。この「1024画の漢字」とは一体何なのでしょうか。
実態を調査すると、これは「雷」という漢字を16個(4×4のグリッド状)結合させた、あるいは「龍」や「雲」を過剰に敷き詰めた図形を指しています。結論から申し上げれば、これらは言語学者や辞書編纂機関から「正規の文字」として公認されたものではありません。道教の儀式で悪霊を祓うために用いられた「符籙(ふろく・呪符)」に描かれた記号か、近年のインターネットコミュニティで面白半分に考案された「創作ジョーク文字」です。
国際的な文字コード規格を司るThe Unicode Consortiumの『Unihan Database』でも、文字として登録されるには「文献での用例」「社会的な通用性」「文脈における意味の独立性」が厳しく問われます。ただ同じ部品を物理的に掛け算しただけの図形は、文字コード上も「単なる画像」として扱われます。「知られた中で最も画数が多い文字」の正当な限界線は、歴史的辞書に確固たる意味とともに載っている64画(てつ・せい)、あるいは和製漢字の84画(たいと)までが学術的な防波堤となっています。