「山あり谷あり」とは、人生における好調な時期(山)と不調な時期(谷)が交互に訪れるさまを端的に言い表した慣用句です。辞書的な定義においては「平坦な道ばかりではなく、登り坂のような苦難や下り坂、あるいは恵まれた高みと落ち込みの両方を経験すること」を意味し、まさに人生の浮き沈みを象徴する言葉として定着しています。
この表現の語源・由来は、山岳地帯の地形そのものにあります。険しい尾根を越えたかと思えば深い谷底へと下り、再び頂を目指して登り直さなければならない過酷な山道を進む様子を、予測不能な人間の生き方に重ね合わせた比喩表現です。特定の古事や漢籍に起源を持つ故事成語ではなく、日本列島の起伏に富んだ風土の中で暮らしてきた人々の生活実感から自然発生的に生まれた生粋の和製表現と考えられています。
重要なのは、「山」と「谷」の双方が揃って初めて成立する点です。単に「辛いことばかり」を嘆く言葉ではなく、「良いときもあれば悪いときもある」「悪い時期の後には再び登り調子が巡ってくる」という循環的な世界観を含意しているところに、この言葉が持つ独自の含蓄があります。