『龍が如く』の真骨頂は、主人公と対峙するライバルや盟友たちとの「背中の対比」にあります。背中を突き合わせ、あるいは対峙して上着を脱ぎ捨てる瞬間、図柄同士の対話が始まります。
初代作における屈指の名対決を彩ったのが、錦山彰の緋鯉と昇竜の伏線です。錦山の背中に刻まれていたのは、激流を遡る鮮やかな「緋鯉(ひごい)」。桐生の「応龍」と並び立つことを願いながらも、所詮は龍になる前の鯉に過ぎないというコンプレックスと、龍へ成り上がろうとする血を吐くような執念を象徴していました。親友でありながら絶対に埋まらない格差という悲劇的な伏線が、この二つの図柄によって視覚的に提示されていたのです。
桐生と双璧をなす圧倒的な力を持つ巨漢・冴島大河の猛虎デザインは、まさに「龍虎相搏つ」の言葉通り、龍と対等に対峙できる唯一無二の存在であることを示しています。険しい岩場に腰を据え、風に向かって咆哮する猛虎は、二十五年間もの長きにわたる過酷な獄中生活に耐え抜いた不屈の精神力と、決して群れない孤高の信念を表現しています。
東城会六代目会長として苦悩し続けた堂島大吾の不動明王の理由も、極めて示唆に富んでいます。不動明王は仏敵を降伏させる激しい憤怒の形相を持ちながら、右手には悪を断つ宝剣、左手には迷える衆生を救う羂索(けんさく)を持ち、背後には一切の煩悩を焼き尽くす火炎(迦楼羅炎)を背負っています。崩壊寸前の巨大組織・東城会を一身に背負い、どれほど泥を被ろうとも組織の礎となって揺るがずに立ち続ける「不動の覚悟」がそこに宿っています。
さらに、『龍が如く2』で桐生と死闘を演じた関西の龍・郷田龍司の黄龍と桐生との関係は、シリーズ屈指のライバル関係として語り継がれています。五行思想において世界の中心を司る至高の存在「黄龍(こうりゅう)」を背負い、宝剣を携えたその意匠は、力による完全制覇を目指す王者の風格を漂わせます。「本物の龍は一匹でええ」と言い放ち、桐生の応龍と激突した黄龍は、己の覇道を貫く男のプライドそのものでした。