瀧内公美という役者の凄みを決定づけた金字塔といえば、荒井晴彦監督がメガホンを取った映画『火口のふたり』(2019年公開)です。白石一文の同名小説を原作にした本作は、東日本大震災の記憶が影を落とす秋田の地で、かつて恋人同士だった男女が再会し、切迫した情欲と生の実感を燃え上がらせる濃密な心理ドラマでした。
作中で描かれる大胆な濡れ場シーンの連続は大きな反響を呼びましたが、特筆すべきはその過激さ以上に、男女の根源的な生への渇望が透き通るような美しさで描かれていた点です。相手役を務めた実力派俳優・柄本佑との共演では、互いの信頼関係に裏打ちされた阿吽の呼吸によって、日常の延長線上にある生々しくも愛おしい交情が見事に表現されました。
撮影現場では、台本に記された言葉の行間を丁寧に汲み取りながら、過度な装飾を削ぎ落としたリアルな身体表現が追求されました。観客の視線を釘付けにしたのは、単なる露出ではなく、全身の毛穴から滲み出るような登場人物の「孤独と熱気」そのものでした。