何かに集中しているわけでもないのに次から次へと脈絡のない雑念が湧き上がる最大の生物学的トリガーは、脳のデフォルトモードネットワーク過活動にあります。デフォルトモードネットワーク(DMN)とは、内側前頭前野や後帯状皮質などで構成される脳の神経回路で、自動車で言えば「ニュートラルに入れたままアクセルを踏み続けているアイドリング状態」に相当します。
脳科学における定説として、人間の脳は体重のわずか約2%の重量でありながら、全身の消費エネルギーの約20%を消費します。さらに驚くべきことに、その脳が消費するエネルギーのうち、意識的な計算や作業に使われるのはわずか5%程度に過ぎず、全体の約60〜80%がこのDMNのアイドリング活動に費やされています。つまり、ぼんやりしているつもりでも、脳内ではバックグラウンドアプリが無数に起動しているスマートフォンのように、膨大なエネルギーが熱として消費され続けているのです。
DMNが暴走すると、過去の後悔や未来の不安を目的もなく反芻する「マインドワンダリング」が止まらなくなります。この状態こそが、本人が自覚する思考が止まらない理由そのものです。さらに、そこに拍車をかけるのが、同じ音楽のワンフレーズが頭の中で延々とループ再生される「頭の中の音楽が止まらないイヤーワーム現象(別名:音楽幻聴・認知の痒み)」です。イヤーワームは、脳の聴覚野と短期記憶を司るループ回路がストレスや疲労によって誤作動し、未完了の情報を補完しようと空回りすることで発生します。雑念の洪水と音楽のループが同時多発することで、脳内はまさに「四方八方から拡声器で鳴らされているような騒音空間」と化してしまうのです。