「コンクリートを流し込んでしまえば、外側からは鉄筋が何ミリ沈んでいようが絶対にバレない。それがこの業界の暗部だった」――大手ハウスメーカーの下請けとして30年以上基礎工事を手がけてきたベテラン鳶職人は、取材班の問いかけに対して沈痛な面持ちで現場の生々しい実態を語り始めました。
住宅基礎の配筋工事において、立ち上がり部分の基礎幅は一般的に150mmで設計されます。中央に鉄筋を配置した場合、両側の型枠までの距離は理論上それぞれ60mm強となり、法令基準の40mmを余裕でクリアできるはずです。しかし、地面のレベルの狂いや鉄筋の曲がり、さらには鋼製型枠を取り付ける職人が「鉄筋が邪魔で枠が入らないから」とバールで鉄筋を強引に内側へ曲げて固定する行為が日常化している現場が存在します。結果として片側のかぶり厚さがわずか15mm〜20mmにまで押し潰された状態のまま、生コンクリートが流し込まれるケースが後を絶ちません。
インターネット上の相談窓口や知恵袋、SNSを調査すると、新築中の施主からの切実な悲鳴が数多く見受けられます。
「着工後に現場を見に行ったら、基礎の鉄筋が外側の型枠パネルに完全に密着していました。現場監督に『これではかぶり厚さがゼロではないか』と問いただすと、『生コンを流すときの圧力で自然に内側に戻るから大丈夫です』と説明されました。不安で夜も眠れません」(新築マイホーム建築中の施主・SNS投稿より)
建築の専門知識を持つ第三者機関の検査員は「生コンの流動圧で鉄筋が自然に正しい位置へ戻ることなど物理的にあり得ない。むしろ生コンの重量で外側に押し出され、完全に型枠に張り付いたまま硬化する」と一刀両断します。日本建築学会が定める配筋検査かぶり厚さ許容差では、施工誤差の限度は一般に±15mm以内とされていますが、法定義務である最小かぶり厚さを1ミリでも下回ることは許されません。
国交省が推進する「2026年最新建築施工管理基準」では、ドローンやLiDARスキャナを用いた配筋の3次元画像計測による自動合否判定システムの導入が進められています。しかし、こうした先端DX技術が導入されているのは一部の大手ゼネコンの超高層現場に限られており、中小工務店が手掛ける木造住宅や低層アパートの現場では、いまだに目視確認と旧態依然とした現場任せの配筋検査が主流のままです。