インターネットの相談掲示板やSNSを丹念に調査すると、健診結果に対する生々しい戸惑いと油断が浮き彫りになります。
「毎年オールAだったのに、30代半ばを過ぎて突然ALTが60を超えた。痛みもだるさも何一つないのに信じられない」(30代会社員男性)
「お酒は年に数回しか飲まない。知恵袋で『お酒を飲まないなら体質的な一時的一過性』という回答を見て放置していたら、翌年の検査で精密検査指示(D判定)を食らった」(40代主婦)
こうした声が示す通り、肝機能障害の初期症状は「存在しない」に等しいのが冷酷な現実です。黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)や腹水、手のひらの紅斑、強い全身倦怠感といった教科書的な兆候が現れる頃には、病態はすでに非代償性肝硬変などの不可逆的な段階へ突入しています。
また、病態のスピード感を見極める上では、急性肝炎と慢性肝炎の違いを正確に把握しておく必要があります。ウイルス感染や特定の薬物が引き金となる急性肝炎では、急激な倦怠感や発熱、食欲不振を伴い、AST・ALTが数百〜数千U/Lという桁違いの数値に跳ね上がります。一方、生活習慣やNASHに起因する慢性肝炎は、自覚症状がほぼ皆無のまま、AST・ALTが40〜80U/L前後の「軽度〜中等度の高値」を年単位でダラダラと維持します。「痛くないから平気」という自己判断こそが、静かな病変の進行を許す最大の盲点です。