「手足口病は子どもの頃にかかったから、もう二度とかからない」——この広く信じられている俗説は、完全な医学的誤解です。手足口病を引き起こすウイルスは単一ではありません。コクサッキーウイルスA6、A16、A10、エンテロウイルス71など、判明しているだけでも複数の異なる血清型が存在します。ひとつの型に感染して抗体を獲得しても、別の型に対する免疫は成立しないため、大人であっても生涯で何度も手足口病に罹患する可能性があります。
さらに恐ろしい盲点が「アルコール消毒への過信」です。手足口病の原因であるエンテロウイルス属は、脂質の膜を持たない「ノンエンベロープウイルス」に分類されます。一般的なアルコール手指消毒剤に対して極めて高い抵抗力を持っており、エタノール製剤をいくら擦り込んでもウイルスは失活しません。最も効果的な防御策は、流水と石けんによる入念な手洗い(30秒以上)によって、ウイルスを物理的に洗い流すことです。家庭内感染を防ぐためには、タオルの完全な共用禁止と、感染者の便を処理する際の使い捨てビニール手袋・塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)による消毒が絶対条件となります。