近年の人事労務において、極めて深刻な問題となっているのが、窓際化を意図的に利用した「自主退職への追い込み」です。かつて社会問題となった「追い出し部屋」は、法規制が強化された現在も、より巧妙な形で息を潜めています。
2020年に施行され、全企業に義務付けられたパワハラ防止法(労働施策総合推進法)では、パワハラの代表的な6類型の一つとして「過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)」が明記されています。
現場取材で得られたある大手製造業の元社員の手記には、次のような生々しい実態が記されていました。
「管理職を解任された翌週から、地下の資料室で過去30年分の手書き図面をスキャンしてフォルダ分けする作業だけを命じられた。冷暖房も効きにくい部屋で同僚との会話は一切なし。上司からは『君の経験を活かした重要なアーカイブ化プロジェクトだ』と説明されたが、実質的には退職届を出させるための嫌がらせであることは明白だった。3ヶ月で精神の限界を迎えた」
企業側は解雇権濫用法理を警戒し、直接的な「クビ」の宣告を避けます。その代わり、合法的な業務命令の体裁を装いながら、意図的に窓際状態を作り出して精神的苦痛を与え、自己都合退職へと誘導するのです。このような追い出し部屋とパワハラのグレーゾーンは、司法の場でも争われるケースが後を絶ちません。窓際族という立場は、ときに経営陣が従業員を間接的に排除するための残酷なツールとして機能している側面を見逃してはなりません。