核小体とは、真核細胞の核内部に観察される電子密度の高い球状または卵円形の構造体である。1つの細胞核内に通常1個から数個存在し、細胞の代謝活性が高いほど大きく発達する性質を持つ。多くの学習者が抱く「細胞核そのものと何が違うのか」という疑問に対する端的な答えは、「核小体は細胞核という巨大な司令室の中に設置された、リボソーム製造専用の特区」という位置づけにある。
生物学の歴史において、かつて日本語で「仁(じん)」と表記されていたこの構造は、現在の標準的な学術用語および高校生物の指導要領では「核小体」に統一されている。仁という言葉は種子の中身や果実の核を連想させる古典的な直訳であったが、英語の「nucleolus(核の中の小さな核)」の語源に忠実であり、構造的実態をより正確に表す名称として核小体と呼ばれるようになった。両者に生物学的な差異はなく、同一の構造体を指す新旧の呼称にすぎない。
核小体が細胞質ではなく核の中に存在する必然性は、遺伝情報の保管場所と直接連動している点にある。リボソームを構成するRNA(rRNA)をコードする遺伝子は、ゲノムDNA上の「核小体形成域(NOR: Nucleolar Organizer Region)」と呼ばれる特定領域に集中している。遺伝情報を抱えるDNAが核膜に守られている以上、そのDNAから直接rRNAを読み出して初期加工を行う現場もまた、核の内側に配置されるのが最も合理的だからである。