大相撲の世界でモンゴル勢が圧倒的な強さを誇る背景には、単なる個人の素質を超えた「身体構造」「武道文化」「ハングリー精神」の3大要素が密接に絡み合っています。
最大の要因として挙げられるのが、モンゴルの伝統格闘技「ブフ(モンゴル相撲)」の経験です。大相撲とブフには決定的なルールの違いがあります。大相撲が直径4.55メートルの土俵内で争われ、足の裏以外が地面に着くか土俵外に出ると敗北となるのに対し、ブフには土俵の境界線がありません。膝や肘など「膝から上の部位」が地面に着くまで勝負は続きます。
このため、ブフ経験者は「土俵際で残すための驚異的な粘りと柔軟性」「倒れないための卓越した体幹バランス」を幼少期から自然に獲得しています。さらに、上半身に着用する牛革製の胴着「ゾドグ」を掴んで技を掛け合うブフの攻防は、大相撲の廻し(まわし)を取る技術や上手投げ・内掛けといった四つ相撲の技術と極めて高い親和性を持っています。
2つ目の理由は、モンゴルの厳しい自然環境と生活習慣です。標高1,000メートルを超える高地、冬には氷点下30度を下回る過酷な気候の中で、幼少期から馬に乗り、家畜を追い、草原を駆け巡る遊牧生活は、強靭な心肺機能と足腰、強固な手首・握力を自然に鍛え上げます。主食となる羊肉や高タンパクな乳製品中心の食生活も、骨太で怪我をしにくい肉体のベースを構築しています。
そして3つ目が、母国と家族の生活を背負って異国へ飛び込む圧倒的なハングリー精神です。言葉も通じず、食文化も礼儀作法も異なる日本の相撲部屋に単身飛び込み、関取になって母国に仕送りをするという強い使命感が、日本人力士以上に過酷な稽古に耐え抜く精神力を生み出しています。